傷だらけのヴィーナス
間部主任はそのまま私に近づいてきて、あと少しでも動けば唇が触れ合ってしまうくらいの距離だった。
なっ、…な!
私は顔が真っ赤になってしまい、どうすることもできなかった。
「―――おいおい、間部!積もる話はのちほどってことにしておけよ」
まるでドラマのような甘ったるい雰囲気を救ったのは、先輩の櫻井さんだった。
「ん〜…。そうだな、そうしよう。ごめんね、えっと、…名前は?」
そこでやっと手が離れ、私は後ずさる。
「こ、小松です!」
「―――ゴホン!ま、まぁまぁ。とにかく明日からよろしくということで。業務に戻ってくれ!」
部長はわざとらしい咳払いをしてその場を締めくくった。
てか、遅いよ!
…まだ顔が熱いっつーの。