傷だらけのヴィーナス
秋とはいえ、身体を動かせば身体が熱くなってくる。
数時間も経つと、私は疲労感でいっぱいになっていた。
「小松ちゃん。休憩しろよ」
突然資料室の扉が開き、中に櫻井さんが入ってきた。
手にはペットボトルのお茶を持っている。
櫻井さんは私にそれを手渡し、近くにあるいすに腰掛けた。
「ありがとうございます」
私はそれを受け取り、のどを潤した。
「それ、左京からだよ」
櫻井さんはそう言い、意味深な笑顔を見せてきた。
何も言わない私の反応を楽しむように続ける。
「左京、さっきからずっと資料室の扉のほうを見てはため息ついて……はっきり言って、初めて見た。あいつのあんなところ」