傷だらけのヴィーナス
―――――
―――
入社試験の日、私は緊張を隠しきれずにいた。
いろいろな会社を受けては落ち、総合職で受けられる会社はもうだいぶ限られていたからだ。
これでダメならどうすればいいんだろう。
そんな後ろ向きなことを考えながら、試験会場近くの休憩室から空を眺めていた。
「…学生さん?」
そんな私に声をかけてきたのは、休憩室にやってきた男の人だった。
私はとっさに頭を下げ、その場を去ろうとした。
「緊張してるでしょ?ちょっと待ってな」
どうも緊張感が伝わってしまったらしい。
私は立ち止まり、俯いて頷いた。
彼は自動販売機からあったかいココアを買い、手渡してくれた。