傷だらけのヴィーナス
「ちゃんと笑えれば大丈夫だから」
そう言ってくれた声がとても優しくて、私は笑顔を返した。
「…ありがとうございます!」
私はもらったココアを手に、控え室に戻った。
―――忘れていた記憶が、一気によみがえった。
確かにあの日、私はそう言ってもらったのだ。
そして、その言葉を胸に、内定をもらったのだ。
……あれが間部主任だったなんて。
考えたこともなかった。
あのときから私のことを忘れていなかったの?
見ていてくれたの?
どうしよう。
―――嬉しい。