傷だらけのヴィーナス
それから定時までの間に私と間部主任の一件は瞬く間に広まり、誰かとすれ違うたびにそのことを言われた。
「災難だったな。しかし、あそこまでされながらも知り合いとかじゃないわけ?」
「小林君までそんなん言わないでよ!…初対面、のはずなんだけど」
なんだか自信がない。
今まで男子となんて仲良くしたこともなかったから、もしかしたら私が覚えていないだけとか?
うーん、わからない。
資料整理をしながら、私たちはそんなことを小声で話をしていた。
「こら。あんまり掻いてるなよ」
考え出すとついつい掻きすぎてしまう悪い癖。
小林君に注意され、私は手を止めた。