傷だらけのヴィーナス
*セカンド・キス



―――――
―――

それから、間部主任と私は仕事以外では会話をしなくなった。

これが当たり前なんだ。
そう何回も言い聞かせては、泣きたくなる気持ちを抑えた。

夜、どんなに疲れていても、間部主任の顔がちらついてなかなか眠れない。
おかげでアトピーも悪化の一途をたどっている。

指にはあかぎれのような傷がいくつもでき、痛々しかった。



「ねぇねぇ、聞いた?最近、間部主任に彼女できたんだって!」

「あ、見た見た!派手な人だったよね〜」

トイレでたまたま会った派遣社員の女の人たちにそう話しかけられ、私は動揺した。

「…そうなんですか」

「一緒に仕事してても気づかないもんなのね」

「まぁ、プライベートですから」

私はそう答え、その場をあとにした。



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