傷だらけのヴィーナス
―――翌日、仕事が終わり私は定時で帰ることにした。
今日一日、小林君がいつも通りに私に接してくれたのが救いだった。
「お先に失礼します」
私はそう言って、会社をあとにしようとした。
しかし、玄関近くまで来たとき、後ろから誰かが駆け寄ってくるのを感じた。
「待って、有紗ちゃん!」
振り返ると、パーマがかった髪を揺らしてこちらにやってくる間部主任の姿があった。
「主任――…」
私は主任の姿を確認し、再び外へ向かった。
「待てっつの、有紗!」
ちょうど玄関を出た辺りで、私は肩をつかまれる。
その瞬間、向こうから向かってくる影があった。
―――美和さんだ。