傷だらけのヴィーナス



美和さんは、こちらへ向かってくると私を押し退けて間部主任に飛びついた。

「左京!会いたかった…」

主任はそんな熱烈ラブコールに眉一つ動かさず、美和さんに話しかけた。


「美和」

「なぁに?左京」

「離れてくれ」

すると、美和さんは私を指さしてわめき散らしだした。

「……あんな女のどこがいいっていうの!?」

私は、いきなりのことで面食らう。
なにも言えないでいる私に、美和さんはさらに続けた。

「ねぇ、悪かったわ。…魔が差したのよ。じゃなかったらあんな男のとこなんか行かなかった」

間部主任は無言のまま話を聞いていた。

私は、いたたまれない気持ちでいっぱいだった。



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