傷だらけのヴィーナス
「わぁ………」
車で数十分ほど郊外へ向かい、たどり着いたのは高台だった。
都会の喧噪が一望できて、照明の一つ一つがダイヤのように輝いている。
私は身を乗り出して景色を眺めた。
「気に入った?」
私の背後から間部主任はそう話しかけてくる。
「はい!―――わっ!?」
私が振り返ってそう返事をすると、間部主任は私を自分の胸に引き寄せた。
きつく、きつく抱きしめてくるその力が心地いい。
私は目を閉じて、身をゆだねた。
「有紗、有紗………俺の、有紗」
私の名前を何度も呟く。
「……好きだ」