きいろい青空【完】



そして、昼休み。


俺は約束の5階へ向かう。




下の廊下は騒がしいのに、5階の廊下はしん静まりかえっていた。



もうすでに、瞳はいる。



窓から静外を眺めていた。





「瞳」




俺の呼びかけに気付き、真剣な顔をして近寄って来た。




「私が、先に話していい?」




「うん。いいけど」




「直輝くんは、これから私に“ごめんなさい”って言うんでしょ?」




「………」




その質問に何も答えられなかった。




急に何を言い出すんだ…!?





でも、当たっている…





「きのう、翼さんと」




「翼に何かされたのかっ!?」




翼の名前が出たから、瞳の言葉を遮って声を出してしまった。






「ううん。話したの。それで、わかったの。翼さんは、本当に直輝くんが好きなんだって…」




瞳は小さくつぶやいた。




「えっ?」




予想外の言葉に、逆に問いかけてしまった。




「きのう、翼さんに話があるって言われて。直輝くんに対しての“好き”の気持ちをたくさん聞いて…だから、私がどんなに頑張っても叶わないよ。私、直輝くんを…諦める…ね」



瞳はうつむき、涙声になった。





「大丈夫?」



手を近づけた瞬間、瞳は俺の手を振り払って1歩下がった。




「優しくしないでよ…私、ひとりになりたいから…行ってくれない?」





「わかった。泣くなよ?…好きになってくれてありがとう。でも、ごめんね。じゃあ…行くね」



それだけ伝え、俺は背を向けて歩き出す。






「直輝くんっ!!」




突然、瞳が俺の名前を叫んだ。



振り返ったら




「花恋ちゃんに、“ごめんなさい”って言っといて!!本当にごめんなさいって…」




と、涙をたくさん溜めた目で真っ直ぐ見つめ、言い放った。





その瞳に俺は大きくうなづいた。







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