きいろい青空【完】
次々に思い出される花恋のことで、頭がいっぱいになる。
金魚を初めて釣れたとはしゃいでいた花恋。
落書きせんべいに“颯大好き!”と描き、照れていた花恋。
こんなに思い出しちゃうなんて。
俺…やっぱり花恋のこと……
「直輝」
突然、翼が俺の名前を呼んだ。
振り返ると、袖を引っ張られて、花火の音だけがきこえる中。
俺と翼はキスをした。
「ふたりには…秘密だよ?」
ダメだな、俺。
翼にこんなことさせるなんて…。
そして…今度は俺からキスをした----
ガタンゴトンガタンゴトン…。
電車に揺られ、自分たちの街へ帰る。
「翼、寝ちゃったよ」
「ほんとだぁ〜。寝顔カワイイっ!」
花恋が寝ている翼の顔を覗き込む。
翼は俺の肩に顔を乗せ、スヤスヤと音をたて寝ている。
『〇〇駅〜、〇〇駅〜。お出口は、左です』
車内アナウンスが聞こえ、扉が開いた。
急に立ち上がり、その開いた扉に近づいていく颯さん。
「どうしたの?颯」
花恋が心配そうに声を掛けた。
「俺…行くとこあっから」
花恋のほうを振り向きもせず、ただそれだけ答えた。