きいろい青空【完】
「えっ!!どこ行くの!?」
花恋が慌てて近寄り、颯さんの服にしがみ付く。
「大丈夫だから」
「颯!!待ってよ!ねぇ…」
それでも、颯さんは花恋を押切って電車を降りてしまった。
『扉が閉まります』
車内アナウンスと共に、扉が閉まる。
窓に顔を寄せて、走っていく颯さんの後ろ姿を見つめている花恋。
颯さんの姿が見えなくなると、その場に花恋はしゃがみこんだ。
その背中は小さく見えた。
「今日の颯…。なんか、変だったよね…?」
花恋の声は震えていた。
「どうに?」
「全然笑ってくれなかった。どうしてかな?うちと居て、やっぱり楽しくなかったのかな…」
確かに、颯さん笑っていなかった。
でも、やっぱりってなんだよ!?
「そんなことないよ。だって、知ってる?颯さんがいつ来たのか。集合の1時間前に、もう来てたんだよ?花恋と行くの待ちきれないって言ってた。すごい嬉しそうだったよ」
「ほんとぉ…?」
「うん。本当」
『△駅〜△駅〜。お出口は左です』
また車内アナウンスが流れ、花恋の前の扉が開いた。
「うち…ダメだ。行く…」
そう言い残すと、花恋は立ち上がり、電車を降りた。
走って颯さんのもとへ向かう花恋の後ろ姿。
シューっと音をたて、扉が閉まる。
行ってしまった……。
これで、いいんだよな?
「なぁ…?翼」
寝ている翼の手をそっと握った。