きいろい青空【完】
…もしかして…?
「あれ…花恋?」
愛しい声が名前を言った。
「はぁーはぁー…いたぁ。颯っ」
みつけた。颯。
颯は、ひとつのお墓の前でしゃがんで、手を合わせていた。
「なんで!?花恋いんの??」
びっくりした顔で歩み寄ってくる。
「あっ、ケータイ」
颯はポケットからケータイを取り出し画面をのぞき込む。
「花恋からの電話だったんだ。ゴメンな、出られなくて。拝んでたから」
着信を切ると、うちのケータイの呼び出し音も切れた。
「その音で颯を見つけたんだよ?」
「ごめんな。怖かっただろ?ひとりで」
「うん!!超ー怖かった…てか、どうしたの?今日、変だったし。いきなり、電車降りちゃうし。ここ、お墓…だし」
周りを見渡す。
本当に怖い。
なんで、こんなとこにいるの!?
「今日…誕生日なんだ。母さんの…」
深刻な顔になって、答えた颯。
っていうことは…颯のママは亡くなっているっていうこと?
目の前に立っている颯の顔が暗闇だけど、わかる。
そんな悲しい顔して、目を真っ赤にして。
泣いてたんでしょう?
そんな颯を見ていたら、急に守りたくなった。
颯を襲う悲しみ全てから守りたい。
いつもいつも、うちを守ってくれている颯だけど
絶対、颯のほうが悲しみが大きいはず。