きいろい青空【完】
「直輝…取り乱しちゃってゴメン。もう大丈夫だから…か、帰ろう?」
翼は両手で俺を押し、体を無理矢理離した。
「うん…」
翼の目には、涙がたまってうるうるしている。
その目を隠すかのように、俺の目と合わせようとはしなかった。
「早く帰んなくちゃ寒いよ」
そう話しながら、巻いているマフラーを巻き直す翼。
放ってあった補助バックを持ち、翼に右手を差し出す。
翼の顔に笑みが浮かび手を繋いでくれた。
繋いだ瞬間、翼の手の冷たさが伝わる。
温めてあげたくて、ブレザーの外ポケットに手を繋いだまま翼の手を入れた。
「ね、ねぇ?直輝、今度の土曜さ。直輝の誕生日じゃん?」
慌てて話を変えたようにぎこちない話し方。
ゆっくりとふたりで歩きながら、ふたりで温まりながら。
こういうのが冬の幸せっていうのかな?
「あれ?今日は何日だっけ?」
「今日は、19日だよ」
自分の誕生日なんてすっかり忘れてた。
毎年、花恋と家に集まって誕生日パーティーをする。
花恋と同じ誕生日だから…
「だから、誕生日の日。デートしよっ?」
翼は口角をきゅっと上げ、子供のような無邪気な笑顔を見せた。
「いいよ」
「じゃあ、10時に駅前集合で!いい?」
「うん」
生まれて初めての、花恋と別々の誕生日……
俺の知らないところで
あいつは14才になる。