きいろい青空【完】
映画を観て、その後も買い物したりプリクラ撮ったり。
映画はずっと翼が観たがっていた恋愛もの。
翼といた時間はあっという間に過ぎた。
「どうする?次、どこ行く?直輝が決めてね」
切符売り場で翼が聞いた。
「じゃあー…海…」
「海?じゃ、行こう!」
海に一番近い駅を探して、切符を買う。
そして、また電車に乗り込んだ。
今度は空いている。
一安心して、翼を座らせた。
てか、海を選ぶ男って…
キモいかな…?
でも、急に見たくなったといいますかぁ…
座っている翼を見ると、くすくすと笑っている。
「何笑ってんの?」
「だってさ。海行きたいっていう直輝、カワイーなぁって思って」
「はぁ!?なんで?」
「だってかわいんだもん!」
なんか恥ずかしくなって、頭をかきながら窓の外に目をやった。
そこには、夕日に照らされたオレンジ色の海があった。
『〇〇駅、〇〇駅。お出口は、左です』
電車にアナウンスが鳴り、左側の出口が開く。
「ついた!行こ行こっ」
翼と手を繋ぎ、少し歩いたらあった。
「わぁーーー!!海だぁーー!超キレー…」
翼は砂浜に座った。
その隣に俺も座り込む。
「つぅか、寒いね」
と、白い息を吐きながら言った俺。
「12月だもん。当たり前じゃん」
そっか…12月か。
ついこの前、セミが鳴いていたような気がする。
いつの間にか、冬は訪れていた。
そうだ。
俺は、アノ時から時が止まっていたのかもしれない。
花恋無しになってから、どのくらいの時が経ったのだろう…?
「見て、直輝。夕日がすごいね!」
翼が指差した先には、今にも水平線から消えてしまいそうな夕日が見える。
くっきりと輝いている。