きいろい青空【完】
その目的の病院へ到着すると、自転車を放り投げ、走り込んだ。
この広さと、この鼻をつくような独特のにおいが恐かった。
俺はナースステーションで身を乗り出して聞く。
「颯さんはどこですか?楠木颯!!どこにいるんですかっ!?」
もう、無我夢中だった。
早く早く。
今にでも、あの笑顔に会いたくて…
「落ち着いてください。その患者さんは…」
看護師さんは患者の名前が書いてある紙をペラペラとめくり、颯さんの名前を探す。
「3階の207号室にいます」
「ありがとうございますっ!」
俺はお礼だけを言うと、走った。
走って走って走って3階に辿り着いた。
「---------っ!」
でも、その足は止まってしまった。
何も言えない。
何も考えられない。
何も出来ない。
そこで俺は見たんだ…
廊下に響く男の人の泣き声と。
廊下の真ん中にしゃがみこんでいる花恋の後ろ姿。
それと…
-----『 ピーッ… 』
無機質な機械音だけがきこえていた…