きいろい青空【完】
「颯ぇぇーーーーー!!!うあぁぁっ…っ。逝くなっ…!おい、はや…って!バカっ!!逝くんじゃねぇーよっ…ぅああ…っ」
男の人の泣き叫ぶ声。
ひとつの病室から、白衣を着たおじさんと看護師さんが4人出てきた。
その足取りは重く、ため息をつきながら歩いて行った。
膝がガクっと折れその場に崩れ落ちた。
今…颯って言ったよね…?
今、逝くなって言ったよね…?
颯が…?
そんなの、嘘だよ。
涙なんか出ないじゃん……。
その場に放心状態になったまま、どれくらいの時間が経っただろう。
ただただ座っていただけだった。
そんな時、突然。
「大丈夫?」
声がし見上げると、顔が涙でぐしゃぐしゃになった男の人が立っていた。
「あ、はぃ…っ…」
声が出ない。
「えっと…君は、花恋ちゃん?だよね?」
男の人は、うちの前にしゃがんだ。
「は、はい。そう…です…」
「花恋ちゃんの事は、颯から聞いてるよ。彼女なんだよね」
あ、そうか。
颯のお父さんだ。
もう少しちゃんとあいさつできればよかったのに。
「颯に…会ってやってくれないか?俺はもう…絶えられない…っ」
一筋の涙がこぼれ、置いてある長椅子に座りに行く颯のお父さん。
「あの…まだ、わからないんですけど…。颯が今、どうなっているのか」
理解なんか出来ない。
理解なんかしたくない。
「ゆっくりでいいから…」
「はい…」
お父さんは、顔を両手でおさえ静かに泣いていた。