きいろい青空【完】
「颯…さん…」
そこには、静かに眠っている颯さんがいた。
包帯だらけの姿が痛々しい。
「ほんとに…死んじゃったんですか…?」
いくら訊いても、その口が答えることはもう無い。
そっと頬に触れてみると、ヒンヤリと冷たかった。
「颯さん…っ!」
俺は、自分の拳を強く強く握り締めた。
その瞬間。
颯さんへのたくさんの想いが過ぎった。
先輩のこと、嫌いと言ってごめんなさい。
あんなやつと言ってごめんなさい。
ちゃらちゃらして、喧嘩だけが得意で…
どうしようもない先輩だと思っていました。
だけど、俺の目にはきらきら輝いてすごくかっこいい先輩が映っていました。
体育祭の全員リレーでビリだったのに、5人抜きをして。
1位を勝ち取った先輩。
学校に住みついてしまった猫を、ひとりでこっそり体育館の裏で飼っていて。
自分の給食を分けていた先輩。
何をしてもかっこよくて…
先輩は、俺の憧れでした----
「颯さん。ありがとうございました…っ」
うっすらと涙が出そうになり、必死にこらえる。
ここでは絶対に泣きたくない。
颯さんを最後にそっと見つめた。
…これが…。
最後。
そして。
唇を噛みしめながら、病室を出た。
「直輝…か、帰る」
花恋が無表情のまま言った。
「うん…」
花恋はひとりで歩いて行こうとしている。
「ちょっと待ってくれっ!」
颯さんのお父さんが言った。
俺と花恋は振り向く。
「これ。花恋ちゃんに…」
「え…なん…で?」