きいろい青空【完】
直輝*
愛する人を失った花恋の悲しみは、計り知れないだろう…
俺にはわかってあげられない大きな悲しみ。
「あれ。花恋さんは?どこに行ったか知ってますか?」
と、先生が教科書を開きながらクラスに訊いた。
授業は始まっているのに、花恋の席はからっぽ。
「さっき、5階に行くの見ちゃったなぁ~~。すっっげぇ花恋の顔、怖かったし。ヤバい空気だと思うなぁ~」
後ろの席の英斗がわざとらしく言っている。
それ、どうせ俺に言っているんだろ?
「先生、お腹痛いんで保健室行ってきます」
と、俺は先生に言った。
簡単なウソ。
「あら、大丈夫?行ってきなさい」
「ありがとうございます」
席を立って英斗を見ると、ニカっと歯を見せ笑っていた。
俺もそれに笑い返した。
保健室なんか通り過ぎて5階に走った。
5階の廊下には、花恋と翼のふたりがいた。
あっ……!
俺はこの瞬間をとらえ、花恋の腕を掴んだ。
平手打ちをしようと花恋は腕を振ったのだ。
びっくりして、振り返る花恋。
「花恋。やめろ」
「離して!!どうして、直輝はつーちゃんの肩を持つのっ!?」
叫びながら無理やり手を振り払う。