きいろい青空【完】
直輝*
「直輝っ!部活見学して行こうぜ!!」
ルンルンな足取りで、帰りの準備をしている俺に近付いてきた英斗。
初めての高校の授業を無事終え、放課後。
「ごめん。今日は、翼と約束があるんだ」
俺の席は窓側の真ん中。
リュックに教科書を詰めながら、ふと外を見た。
「あ!!ごめん英斗。翼待たせてるから、先行くねっ!」
校門の前に、待っている翼を見つけた。
俺は机の中の荷物をリュックに一気に詰め込んだ。
「ラブくてムカつくねぇ~。まぁ、見学しなくても直輝はバスケか?」
「うん。そのつもり!んじゃ」
「おう。バイバーイ」
俺は、走って翼のもとへ向かった。
校舎の中を迷子になりそうになりながら急いだ。
「あっ!なおきぃ~!!」
俺に気付いて、小さく手を振っている翼。
「そんな走らなくてもよかったのに」
「教室から翼が見えたから。はぁーはぁー…」
汗をかいている額を翼が触った。
細くて白い翼の手に、ドキッとした。
「急がなくても大丈夫だったのに…んじゃあ、行こうか」
額に伸びている手を取り、繋ぐ。
満開の桜の下をふたりで歩く。
春風がふき心地いい。
「どうだった?高校は」
「楽しいよ。みんなクラス一緒だし」
「じゃあ良かった!」
翼は違う高校に通っている。
看護士という夢を叶えるために頑張っている翼。
不良っ子だった翼が夢を叶えようとするなんて、想像もつかなかった。
「あっそーだ。俺ね、引っ越しするんだ」
「はっ!?聞いてないよ!!どこに?」
慌てた声を出した翼。
「翼の家の近くに“星”っていう人が住んでいるのわかる?」
「うん、知ってる。おじいちゃんだよね」