きいろい青空【完】

直輝*




「直輝っ!部活見学して行こうぜ!!」



ルンルンな足取りで、帰りの準備をしている俺に近付いてきた英斗。



初めての高校の授業を無事終え、放課後。





「ごめん。今日は、翼と約束があるんだ」




俺の席は窓側の真ん中。


リュックに教科書を詰めながら、ふと外を見た。




「あ!!ごめん英斗。翼待たせてるから、先行くねっ!」





校門の前に、待っている翼を見つけた。




俺は机の中の荷物をリュックに一気に詰め込んだ。




「ラブくてムカつくねぇ~。まぁ、見学しなくても直輝はバスケか?」




「うん。そのつもり!んじゃ」




「おう。バイバーイ」




俺は、走って翼のもとへ向かった。


校舎の中を迷子になりそうになりながら急いだ。





「あっ!なおきぃ~!!」



俺に気付いて、小さく手を振っている翼。




「そんな走らなくてもよかったのに」



「教室から翼が見えたから。はぁーはぁー…」




汗をかいている額を翼が触った。


細くて白い翼の手に、ドキッとした。




「急がなくても大丈夫だったのに…んじゃあ、行こうか」



額に伸びている手を取り、繋ぐ。



満開の桜の下をふたりで歩く。



春風がふき心地いい。




「どうだった?高校は」



「楽しいよ。みんなクラス一緒だし」



「じゃあ良かった!」




翼は違う高校に通っている。



看護士という夢を叶えるために頑張っている翼。


不良っ子だった翼が夢を叶えようとするなんて、想像もつかなかった。





「あっそーだ。俺ね、引っ越しするんだ」



「はっ!?聞いてないよ!!どこに?」




慌てた声を出した翼。




「翼の家の近くに“星”っていう人が住んでいるのわかる?」



「うん、知ってる。おじいちゃんだよね」





< 191 / 305 >

この作品をシェア

pagetop