きいろい青空【完】
直輝*
その日もいつもと同じように時が流れていた。
変わったことは何もない。
「直輝。ノート写させてくれいっ」
英斗が数学のノートを持って机に寄ってきた。
さっきの授業中寝てたみたい…
「あいつ、授業がはえーんだよなぁ。もっとゆっくり教えろっつーの!」
文句を言いながらノートを書き写していく。
「充分、ゆっくり教えていたと思うけど…てか、英斗が寝てるんじゃん」
「まぁ…細かいことはいーのっ」
「直輝さんっ!!」
突然、名前を呼ばれた。
声のしたほうを振り返ると、担任の大高先生がすごい顔をして教室の入り口に立っている。
急いで走ってきたらしく息切れしている。
「どうしたんですか?」
「早く来てっ」
ただ事では無いことに気付き、俺も走って先生のもとへ行く。
「さっき電話が入ったの。……おじいさんが倒れたって…!」
先生の言葉をすぐには理解できなかった。
自分の耳を疑う。
「何言ってるんで…」
「わたしが車を出すから、病院行くわよっ」
「は、はい」
焦る先生に飲み込まれ、走る先生のあとを追う。
じいちゃんが…?
きのう、あんなに元気だったじゃん!
先生に「下で待ってて」と言われ、俺は校門で待っていた。
少しすると、先生が車に乗って俺の前に停めた。
「早く乗って!」
助手席に乗り込む。
「東第一病院だと言っていたわ」
「東第一病院…」
そう呟いた。
もう二度と…あそこには入りたくなかったのに…
「先生、ありがとうございます」
「そんなこと言ってる場合じゃないわよ。おじいさんの心配しなさい」
「はい…」