きいろい青空【完】




“桜の木”



それは、とてもとても大切な場所。


そこに俺は向かった。




何年ぶりに来ただろう…



ここは、桜の木が1本だけ咲いている丘で、街がすべて見下ろせる。


今も変わらない景色。



きれいな緑色の葉が風に揺れていた。




俺の父さんと、健助おじちゃん(花恋のお父さん)がプロポーズした場所でもある。



俺と花恋にとってもすごい大切な場所で、昔、よくふたりでここにいた。



ふたりだけの場所だった…





「なつかしい…」



本当にそう思う。


全然、来ていなかったから。


というより来れなかったんだ…




花恋との思い出がつまっているから。


大切な場所だからこそ。



ふたりの幸せな時間を思い出すのが、怖くて辛くて…


来れなかったんだ。




「下…ってどーいうこと?」



そう呟いた。



桜の木の下ってじいちゃんが言っていたから。



花恋との昔の思い出を、思い返してみる。




「……あっっ…!!」



思わず大きな声を出してしまった。


そして、無我夢中にただがむしゃらに。



桜の木の下を素手で掘り出した俺。



ただただ、必死になって…






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