きいろい青空【完】



そんな簡単なことすら、今の俺には出来ないんだ。



でも。

だけど…でも。



“会いたい”が大きい-----



会ってもいいの?


こんな俺が?



そんなことを思っても、やっぱり。



“会いたい”だけ。




「……うん」



俺は、剥いていたリンゴを机に置き立ち上がった。



今…。


花恋に会いに行くんだ。


そう決めた瞬間には、足は動き出していた。





走って走って走って、花恋のもとへ…


病院から花恋の家の家路を走る。


風をきって走る意味がわかった。



それほど、速く走れた。


会いたいという気持ちの大きさだけで…。




「はぁーはぁー。っ……」



花恋の家の前で、膝に手をつき呼吸を整えた。


心臓がうるさい。



走ってきたから?

それとも、緊張で?




そんなの分からない。



「ふぅーーっ…」



深呼吸をひとつして、花恋の家のインターホンを押そうと手を伸ばした。




ガチャ……!!!




「え」


「え」



ふたりで同時に一文字だけ、声を出した。


俺は…その場に固まった。



行き場のないインターホンに伸びていた手もそのまま。



えぇーーーーーーーーー!!


どどどどどうしよっ!?



花恋が、神業なタイミングで出て来ちゃった…。



< 252 / 305 >

この作品をシェア

pagetop