きいろい青空【完】
そんな簡単なことすら、今の俺には出来ないんだ。
でも。
だけど…でも。
“会いたい”が大きい-----
会ってもいいの?
こんな俺が?
そんなことを思っても、やっぱり。
“会いたい”だけ。
「……うん」
俺は、剥いていたリンゴを机に置き立ち上がった。
今…。
花恋に会いに行くんだ。
そう決めた瞬間には、足は動き出していた。
走って走って走って、花恋のもとへ…
病院から花恋の家の家路を走る。
風をきって走る意味がわかった。
それほど、速く走れた。
会いたいという気持ちの大きさだけで…。
「はぁーはぁー。っ……」
花恋の家の前で、膝に手をつき呼吸を整えた。
心臓がうるさい。
走ってきたから?
それとも、緊張で?
そんなの分からない。
「ふぅーーっ…」
深呼吸をひとつして、花恋の家のインターホンを押そうと手を伸ばした。
ガチャ……!!!
「え」
「え」
ふたりで同時に一文字だけ、声を出した。
俺は…その場に固まった。
行き場のないインターホンに伸びていた手もそのまま。
えぇーーーーーーーーー!!
どどどどどうしよっ!?
花恋が、神業なタイミングで出て来ちゃった…。