きいろい青空【完】
「うち、行くから」
「ねぇ花恋…お願いだから。一生の…お願いだから…」
この腕を離したら、花恋は行ってしまう。
離したら…
ずっとずっとずっと帰ってきてくれないような気がして…。
とてつもない不安に駆られる。
約束を憶えてないとわかった絶望感があるのに、俺のしまっていた気持ちは言葉となってあふれ出す。
「幼なじみになって下さい。俺の隣に帰ってきて下さい…。俺のそばにずっといて下さい。花恋のこと、忘れた事なんて無かった…頑張ったけど…出来なかった…花恋、俺は……っ」
「離し…て…」
花恋は俺の言葉をさえぎって、つぶやいた。
花恋の声と体が震えている。
聞こえないほどの小さな声。
「お願いだから……手を…離し…て?」
俺の手は、込めていた力を弱める。
花恋の細い腕はスルリと俺の手から抜けた。
為すすべもなく、その場に立ち尽くす俺…
俺からどんどん遠くなる愛しい花恋の背中。
バカだろ…俺は。
どうして。
いつもいつも、あと少しで手が届かないんだろう…?
言えなかった言葉をひとり声に出してみる。
「“好き”なのに-----。」