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オリヱ……!!
オリヱ………!!!
そして、狂おしく募る想いは。
僕に、罪を犯させる。
……閉じ込められた世界から逃げる。
そんな風に決意して、どれくらい時間が経ったのか。
ようやく一時停止が解除されてカラダが自由になるとすぐ。
僕は、部屋のパソコンから自分に関するデータをすべて消した。
研究所から出て、二度と帰らないなんて、そんなつもりはなかった。
ただ。
開発に莫大な費用がかかったらしい僕の身体には。
発信器だとかGPSだとか、僕が『今』どこにいるのか判ってしまう機能がついていたから。
研究所を一歩でも出たら、追って来るだろう、職員に。
オリヱに会う前に捕まらないために。
居所検索の、データだけを消したかったんだけれども。
必要な分だけ探して、ちまちま消している場合じゃなかったんだ。
そして。
実際には、研究所、どころか。
部屋からもほとんど出たことがない僕にも。
知識上では、今着ている薄手の検査着一枚では、目立ち過ぎ。
外に出ることは出来ないことも知っていた。
……オリヱを探しに行くためには。
少なくとも、靴とズボンと上着が要る。
目標はたかが、隣のロッカーとはいえ。
僕の存在理由である、初めての隠密行動の実践に、気分が高揚する。
オリヱを求めて焦る気持ちを抑えて、僕は換気用ダクトに潜り込んだ。