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マニュアル道理、視覚を熱源探査と暗視カメラに切り替えて。
僕は、真っ暗な天井裏を静かに、這い進む。
道は途中で二手に分かれ、片方は女子用、もうひとつは男子職員用らしい。
オリヱのロッカーがどこで、ナニが入っているか、とても興味があったけれども。
用があるのは、男子用だ。
女子用ロッカーへの好奇心を振り切って、そっと、男子ロッカーを覗けば。
四、五人ほどの職員が、まだ残って、着替えをしていた。
「厄介だな。どうしようか?」
彼らがマニュアルにある『敵』だというのなら。
全員まとめて倒す自信があった。
けれども、相手は、僕を作ってくれた、愛しいオリヱの同僚たちで。
ケガでもさせたら、きっとオリヱに怒られる。
だからと言って、このまま全員がいなくなるまで、ぼーっと待っていたら。
その時間分ずっと九谷がオリヱを抱いているだろう。
そんなの。
ゆ る せ な い……!
自分の予測に腹を立て、カッと冷静さを欠いた時だった。
僕は、案外脆かった換気口に、体重をかけ過ぎ。
まだ職員の居る、ロッカー・ルームの真ん中にある天井を踏み抜いた。
めきっ!
なんて。
天井から鳴った突然の音に。
男性職員たちが、ぎょっと、身を引いたのを、僕の目の端が捉えていた。
けれども、もう、どうしようも無かった。
一度壊れ始めた天井は、もう僕のカラダを支えられなかったんだ。
めきめきっ!
ばりばりっ!
そう。
景気良く音を鳴らして、僕は。
呆然と見守る職員の、ど真ん中に落ちて行った。