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どしんっ!
「……っ!
痛ててて……!」
天井から落ちて、腰を強く打った。
僕のシステム的には、オール・グリーン。
どこにも損傷はなかったけれども。
オリヱに作られた疑似痛覚が。
僕を人間らしく見せるために顔を痛みで歪ませ、腰をさすらせた。
そんな僕を見て、職員の一人が、驚いたように、声をかけた。
「九谷博士!
……先輩、大丈夫ですか!?
さっきの定期便で、平木博士と一緒に帰られたと思ったのに……!
なんて所から落っこちて来るんですか!」
……は?
九谷?
僕の前に居るのは、背が高く、横幅もある。
研究所勤めで机の前にかじりついているよりも。
何か他の商売の方が似合ってそうなヤツだ。
まだ脱いでない白衣の胸のプレートには『武蔵川(むさしがわ)』と書かれている。
九谷、なんて宿敵に間違われて、僕はすごくイヤだったけれども。
人間が、親しげに話しかけてくる所を見ると、僕は相当アイツに似ているらしい。
多くの職員に囲まれて、僕は今更、逃げも隠れもできない。
仕方がないので、利用することにした。
僕は、必死そうな顔を作って叫ぶ。
「オレが、オリヱちゃんと先に、帰ったって!?
ウソだ!
出て行ったヤツは、オリヱの作ったアンドロイド、シックス・ナインだ!
野郎、オレの身ぐるみを剥いだうえ、天井裏に押し込んだ挙句。
オリヱちゃんをさらっていきやがったんだ!」