69
降りしきる雪の中を。
やけにしっかりとした足取りで、来たヒトがいた。
背に、リュックサックを背負い。
足に、とげとげのついた靴を履いている所を見ると、本格的に登山をする人間のようだった。
そいつが、岩の上に寝転ぶ僕を見て、驚く声を出した。
「ちょっ……っ!
なんで、ここにヒトが居るの……!」
声を聞けば、女性のようだった、が。
「あなた、雪女……じゃないわよね?」
……おいおい。
女、と言われて、僕は平均的な男性が言うような言葉を、憮然と出した。
「……男だし」
「うぁ、しゃべった! 生きてる!
あなた! 大丈夫!?」
そういいながら、彼女は、半分凍った雪をかき分け、僕に近づいて来た。
その雪を踏みしめるざくざくという音や。
彼女の登山用の装備が,カチャカチャと鳴る音が,やけに耳障りで、僕は顔をしかめた。
「大丈夫。ほっといてくれ」
そう。
夜が明けてしまえば、僕が逃げて来た意味もなく。
オリヱと手に手を取って出勤して来るはずの久谷に、莫迦にされるより。
雪の中に、埋まってしまいたかった。
そんな僕に、彼女は、莫迦ねっ! と叫んだ。
そして、自分のリュックサックの中から、簡易ソリを引き出し、組み立てると。
動けないでいる僕を、手際よく乗せて……唸った。
「あなた、山を莫迦にしてない?
なんて装備で、冬山に来てるのよ!?
真夏のハイキングだって、そんな格好でここを登ろうなんて考えるヒトは,居ないわよ!」
「そんなこと言ったって……」
……僕は,知らない。
黙った僕をどんな風に思ったのか。
彼女は、鼻を鳴らして言った。
「とにかく!
放ってったら、死ぬから、移動するわよ?
ここら辺りは、山頂付近での遭難や、滑落(かつらく)したヒトが集まって来やすくて、緊急用の山小屋があるの」
「……え? でも……」
「何か、文句ある?
言っておくけど、嫌でも連れて行くからね!?
この状況でヒトが生きてるなんて、珍しいんだから!」
やけにしっかりとした足取りで、来たヒトがいた。
背に、リュックサックを背負い。
足に、とげとげのついた靴を履いている所を見ると、本格的に登山をする人間のようだった。
そいつが、岩の上に寝転ぶ僕を見て、驚く声を出した。
「ちょっ……っ!
なんで、ここにヒトが居るの……!」
声を聞けば、女性のようだった、が。
「あなた、雪女……じゃないわよね?」
……おいおい。
女、と言われて、僕は平均的な男性が言うような言葉を、憮然と出した。
「……男だし」
「うぁ、しゃべった! 生きてる!
あなた! 大丈夫!?」
そういいながら、彼女は、半分凍った雪をかき分け、僕に近づいて来た。
その雪を踏みしめるざくざくという音や。
彼女の登山用の装備が,カチャカチャと鳴る音が,やけに耳障りで、僕は顔をしかめた。
「大丈夫。ほっといてくれ」
そう。
夜が明けてしまえば、僕が逃げて来た意味もなく。
オリヱと手に手を取って出勤して来るはずの久谷に、莫迦にされるより。
雪の中に、埋まってしまいたかった。
そんな僕に、彼女は、莫迦ねっ! と叫んだ。
そして、自分のリュックサックの中から、簡易ソリを引き出し、組み立てると。
動けないでいる僕を、手際よく乗せて……唸った。
「あなた、山を莫迦にしてない?
なんて装備で、冬山に来てるのよ!?
真夏のハイキングだって、そんな格好でここを登ろうなんて考えるヒトは,居ないわよ!」
「そんなこと言ったって……」
……僕は,知らない。
黙った僕をどんな風に思ったのか。
彼女は、鼻を鳴らして言った。
「とにかく!
放ってったら、死ぬから、移動するわよ?
ここら辺りは、山頂付近での遭難や、滑落(かつらく)したヒトが集まって来やすくて、緊急用の山小屋があるの」
「……え? でも……」
「何か、文句ある?
言っておくけど、嫌でも連れて行くからね!?
この状況でヒトが生きてるなんて、珍しいんだから!」