69
縛られた傷
『スリープ・モード実施中。
解除条件:8時間後。
もしくは、規定デシベル以上の音量』
……つまり、簡単に言うと。
ある程度以上、うるさくない限り、僕は、朝まで眠る予定だった、ってことだった。
外は、まだ嵐のような猛烈な吹雪だったから。
よほど、大きな音が響かない限り、僕が起きることは、ないハズだった。
なのに。
目覚めてしまったんだ。
まるで、悲鳴をあげるかのように。
切なく、すすり泣く声が聞こえたから。
「……桜?」
声の出どころを探れば。
寝袋にくるまって桜が自分の手を握りしめて眠っていた。
川岸で会った時の逞しさも。
襲って来たら、殴る、と宣言した時の強(したた)かさも無く。
悲しみに、耐えきれないかのように。
華奢なカラダを震わせ丸くなってる、一人の女性の儚い姿がそこにあった。
悪夢、っていうヤツでも見ているんだろうか?
昼間の時とは全然違う変わり様が、何だか、とても不安で。
僕は桜を、起こそうとした。
「桜……?
桜ってば!」
「あ……シン……?」
僕の声に、目覚めたらしい。
髪を乱した桜が、ぼんやりと、僕を眺め……
次の瞬間。
がばっと、寝袋の中に引っ込んでしまった。
「な……なに?」
僕が桜の反応に、戸惑えば、彼女は、寝袋の中で、叫んだ。
「シン! 服着て! 服!
裸じゃない! なんでそんな格好でうろうろしてんのよ!」
「え? そんなこと言ったって……」
仕方が無いじゃないか。
今まで着ていた服は雪に濡れて、薪ストーブの前に掛かっているし。
「部屋の中では、服を着てても脱いでも、本人の自由なんじゃ……?」
「女子の前で、裸でいるなんて信じられない!
自分の家での習慣に、口出す気はないけど!
ここでは、他人の前だし半分『外』でしょうが!
子供じゃあるまいし、なんで、そんな格好で、近づいて来るのよ!」
変なこと考えてたら、殴るわよ!
と叫ぶ桜に僕はため息をついた。
解除条件:8時間後。
もしくは、規定デシベル以上の音量』
……つまり、簡単に言うと。
ある程度以上、うるさくない限り、僕は、朝まで眠る予定だった、ってことだった。
外は、まだ嵐のような猛烈な吹雪だったから。
よほど、大きな音が響かない限り、僕が起きることは、ないハズだった。
なのに。
目覚めてしまったんだ。
まるで、悲鳴をあげるかのように。
切なく、すすり泣く声が聞こえたから。
「……桜?」
声の出どころを探れば。
寝袋にくるまって桜が自分の手を握りしめて眠っていた。
川岸で会った時の逞しさも。
襲って来たら、殴る、と宣言した時の強(したた)かさも無く。
悲しみに、耐えきれないかのように。
華奢なカラダを震わせ丸くなってる、一人の女性の儚い姿がそこにあった。
悪夢、っていうヤツでも見ているんだろうか?
昼間の時とは全然違う変わり様が、何だか、とても不安で。
僕は桜を、起こそうとした。
「桜……?
桜ってば!」
「あ……シン……?」
僕の声に、目覚めたらしい。
髪を乱した桜が、ぼんやりと、僕を眺め……
次の瞬間。
がばっと、寝袋の中に引っ込んでしまった。
「な……なに?」
僕が桜の反応に、戸惑えば、彼女は、寝袋の中で、叫んだ。
「シン! 服着て! 服!
裸じゃない! なんでそんな格好でうろうろしてんのよ!」
「え? そんなこと言ったって……」
仕方が無いじゃないか。
今まで着ていた服は雪に濡れて、薪ストーブの前に掛かっているし。
「部屋の中では、服を着てても脱いでも、本人の自由なんじゃ……?」
「女子の前で、裸でいるなんて信じられない!
自分の家での習慣に、口出す気はないけど!
ここでは、他人の前だし半分『外』でしょうが!
子供じゃあるまいし、なんで、そんな格好で、近づいて来るのよ!」
変なこと考えてたら、殴るわよ!
と叫ぶ桜に僕はため息をついた。