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 そんな風に言うと。

 桜は、するりと僕の腕の中から逃げ出して。

 毛布を一枚羽織り、自分のリュックの中をあさり始めた。


「お腹すいたでしょう?

 何か食べよ?

 ……って言っても、食料は1日分しか持って来てなくて、たいしたモノ無いけど」

 こんなに吹雪がひどくなるなんて、予想外だったし。

 そもそも。

 1日以内に自分の人生に決着をつけるら予定だったから……なんて。

 けっこう凄いことを平気で言って、うふふ、と笑った。

 僕は、そんな桜に肩をすくめて、外の様子に、耳を傾け。

 強い、風の音が止まないコトを確認して、目を閉じた。


「僕の食事は要らないよ。

 それより、吹雪がいつ止むかも判らない。

 当分自力の下山も、助けも難しいんじゃないかな?

 僕の分は、取っておいて、食料はなるべく、長く繋いだ方が良い」


 そう、観的な話をしたのに、桜は首を振った。


「ダメ。立場は、わたしと一緒でしょう?

 シンは、昨日一日何も食べて無いし。

 ここで食べ無いと、保たないわ」


「立場? 違うね」


 僕はころん、とうつ伏せに寝返りを打つと、頬杖を付いて桜を見た。


「僕は、今。自分の身体に傷が無く、代謝を出来るだけ下げているから。

 食事の経口摂取は必要ない……」


「アンドロイドごっこは、もう止めて」


 桜は、怒って声を出すと。

 缶入りのスープを暖めて、二つの器に入れて来た。


「莫迦な理由で、食べ無いなら、口移しでも摂ってもらうから」


「桜」


「シンは死なせないから」


 言って桜は、僕の口元まで、スープを持って来た。


「死ぬつもりでいた、警備員が生き残って。

 要救護者が餓死なんてしたら莫迦だと思わない?

 ……なんて、ね。

 お仕事をやり遂げるってプライドだけの問題じゃないから」


 言って、桜はまた。

 泣きそうに、笑った。


「川岸に寝転んでた、あなた……靴も履かずに動けなくなっているのに。

 楽しそうに雪を眺めてたでしょう?

 それを見て……わたしのココロが鳴ったの」

 
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