69
「今まで……好きなヒトは、確かにいたよ。
でも、それは『母さん』みたいに、好きだったんだ」
……だから、僕は、戸惑ったに違いない。
そして、オリヱの側によりそう九谷が憎くて仕方がなかったのも。
きっと、それは、単純な嫉妬ではなく。
父親を憎む子供のような。
文献で読んだ、エディプス症候群に近かったかもしれなかった。
判ってしまえば、単純なこと。
けれども、今、僕の目の前にいるヒトへの想いは、違う。
桜も、僕を見てキレイだと言ってくれた。
でも僕も、きっと、桜に一目で惚れてしまったんだ。
だから。
予定された、プログラムの外で、胸がときめくんだ。
ヒトに造られた。
偽りの命と、魂を持っているにも関わらず……!
「僕は、桜が、好き、だよ。
……愛してる」
言葉にしてしまったら、単純なこと。
でも、その想いは、胸が張り裂けそうに高まった。
「僕は、今。
桜のことを、誰よりも、何よりも、愛してる……!」
それは、魂が震える想い。
この上なく真剣な、ココロの叫びだった。
そして、僕の声に、桜も、その目を見開いた。
「本当に……?」
と、戸惑い、揺れる小さな声を出した。
「わたしのこと……好き?」
「うん」
それは、どうにも止められないぐらいに。
「……あのひとを忘れて、あなたに走ったら……軽い……悪い……女だと思う?」
「……思わないよ。
だって、その男は、帰らずに。
桜は、三年も、泣きながら、探していたんだろう?
よく頑張ったよ。
もう、十分だよ……」
だから、おいで?
と広げた僕の腕に。
桜は、もう何も言わずに、飛び込むと。
彼女は、僕の胸の中で、声の限りに、泣いた。
でも、それは『母さん』みたいに、好きだったんだ」
……だから、僕は、戸惑ったに違いない。
そして、オリヱの側によりそう九谷が憎くて仕方がなかったのも。
きっと、それは、単純な嫉妬ではなく。
父親を憎む子供のような。
文献で読んだ、エディプス症候群に近かったかもしれなかった。
判ってしまえば、単純なこと。
けれども、今、僕の目の前にいるヒトへの想いは、違う。
桜も、僕を見てキレイだと言ってくれた。
でも僕も、きっと、桜に一目で惚れてしまったんだ。
だから。
予定された、プログラムの外で、胸がときめくんだ。
ヒトに造られた。
偽りの命と、魂を持っているにも関わらず……!
「僕は、桜が、好き、だよ。
……愛してる」
言葉にしてしまったら、単純なこと。
でも、その想いは、胸が張り裂けそうに高まった。
「僕は、今。
桜のことを、誰よりも、何よりも、愛してる……!」
それは、魂が震える想い。
この上なく真剣な、ココロの叫びだった。
そして、僕の声に、桜も、その目を見開いた。
「本当に……?」
と、戸惑い、揺れる小さな声を出した。
「わたしのこと……好き?」
「うん」
それは、どうにも止められないぐらいに。
「……あのひとを忘れて、あなたに走ったら……軽い……悪い……女だと思う?」
「……思わないよ。
だって、その男は、帰らずに。
桜は、三年も、泣きながら、探していたんだろう?
よく頑張ったよ。
もう、十分だよ……」
だから、おいで?
と広げた僕の腕に。
桜は、もう何も言わずに、飛び込むと。
彼女は、僕の胸の中で、声の限りに、泣いた。