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決意
そして、僕は今。
満天の星を眺めていた。
強い風は止み。
今まで散々舞っていた、雪の代わりに降るのは、星だ。
地面には、更に深さの増した新雪が、薄く氷を張り始め。
世界の寒さを強調していたけれど。
それは、却って、夜明けからの晴天を約束しているようだった。
夜明けまで、あと少し。
星に囲まれた、静かで幻想的な風景は。
僕の短い生涯を閉じるには、もったいないほど、荘厳で、美しい。
恋を覚えた間抜けな、アンドロイドが。
一人でひっそりと死ぬにはちょうど良い、日で……時刻かもしれなかった。
もう。
本当に仕方ないことだけど。
あと三日。
いや。
二日早く、吹雪が止んでくれたなら。
もしかしたら、運命ってヤツが多少、変わったかもしれない。
結局。
こんな風に、吹雪が止んで、山の麓(ふもと)まで、桜が降りて行けるほどの天候が回復したのは。
僕が試算した、桜の体力の限界点を、三日過ぎ。
四日目の夜だった。
これでは。
どんなに桜が山に慣れていたとしても。
体力的に、自力での下山、生還は不可能だ。
山道の途中で、力つきてしまうのが目に見えている。
だから。
だから、僕が、助けを呼ぶことにしたんだ。
もちろん。
足先にトゲトゲのついた本格的な靴が無い限り。
確実に足を滑らせ、滑落(かつらく)する難所がいくつもある山を、裸足の僕は超えられない。
それに、研究所からの出がけに、自分に関する通常情報を削除したから。
僕を探すヒトビトの方だって。
この小屋を見つけるのは、きっと難しい。
……でも。
修復不可能なほど破壊され。
全機能の停止したときに発信される。
本当に最後の緊急位置確認の装置だけは生きているはずだった。
……つまり。
僕が死ねば。
研究所から、ヒトが来て、壊れたカラダを回収しに来るから。
その時に桜も回収されれば、助かる。
なんて。
そう言う、こと。