69
「シ………ン。
シックス・ナイン!」
懐かしい声に。
痛みに痺れた目蓋を開けば、怒った、見慣れた顔があった。
「オリヱ。僕は……」
僕のかすれる声に、彼女は、僕に繋がったPCのキーを叩きながら、頬を膨らませた。
「ここは、緊急退避用の山小屋の中。
あなたは、自己崩壊システムのせいで、今動いているのは、頭部だけなのよ!
あたしが来たからって、失われたカラダの修復は出来ないし、残った機能も維持は難しいわ。
あなたは……死ぬのよ?」
「……判ってる」
それは、修復不可能な死の呪文。
一度スイッチを入れたら、制作者でも、止められないのは、判ってる。
「シックス・ナイン。
あなたは、もう少しで完全に壊れてしまうわ。
どうせ、自己崩壊をするにでも。
末梢からでなく、中枢から始めれば、痛みを感じずに、機能停止するのに、莫迦な子ねっ!」
そんな、オリヱの泣き笑いみたいな顔に、僕も、ふふふ……と息をつく。
「中枢からやったら……オリヱと……最後の話が出来ないだろ?
すぐ来ると思って……待って、いたんだ。
僕が抱きしめてた娘(こ)は……?」
「生きているわよ!
だいぶ衰弱していて眠っているから、回復するのに、時間がかかるとは、思うけど。
今、真司が、あたし達が乗って来たヘリコプターに、回収している最中だわ」
そうか、良かった、と。
溜め息をつく間もなく。
その九谷本人が、足音高くやって来た。
「この逃亡野郎のおかげで、とんだ元旦だぜ。
なんだ……まだ、動いているんだ?」
字面よりは、だいぶ心配そうに聞こえるのは、僕の気のせいだろうか。
九谷の言葉に、僕は、小さく、笑った。
「悪かったな。
九谷……博士。
僕は、あんたと交渉したくて……
……今を生きてるんだ」
「……交渉?
もうすぐ完全にポンコツになるお前とか?」
何を莫迦な、と。
怪訝な顔の九谷に、僕は、なるべく不敵に見えるように、微笑んだ。
シックス・ナイン!」
懐かしい声に。
痛みに痺れた目蓋を開けば、怒った、見慣れた顔があった。
「オリヱ。僕は……」
僕のかすれる声に、彼女は、僕に繋がったPCのキーを叩きながら、頬を膨らませた。
「ここは、緊急退避用の山小屋の中。
あなたは、自己崩壊システムのせいで、今動いているのは、頭部だけなのよ!
あたしが来たからって、失われたカラダの修復は出来ないし、残った機能も維持は難しいわ。
あなたは……死ぬのよ?」
「……判ってる」
それは、修復不可能な死の呪文。
一度スイッチを入れたら、制作者でも、止められないのは、判ってる。
「シックス・ナイン。
あなたは、もう少しで完全に壊れてしまうわ。
どうせ、自己崩壊をするにでも。
末梢からでなく、中枢から始めれば、痛みを感じずに、機能停止するのに、莫迦な子ねっ!」
そんな、オリヱの泣き笑いみたいな顔に、僕も、ふふふ……と息をつく。
「中枢からやったら……オリヱと……最後の話が出来ないだろ?
すぐ来ると思って……待って、いたんだ。
僕が抱きしめてた娘(こ)は……?」
「生きているわよ!
だいぶ衰弱していて眠っているから、回復するのに、時間がかかるとは、思うけど。
今、真司が、あたし達が乗って来たヘリコプターに、回収している最中だわ」
そうか、良かった、と。
溜め息をつく間もなく。
その九谷本人が、足音高くやって来た。
「この逃亡野郎のおかげで、とんだ元旦だぜ。
なんだ……まだ、動いているんだ?」
字面よりは、だいぶ心配そうに聞こえるのは、僕の気のせいだろうか。
九谷の言葉に、僕は、小さく、笑った。
「悪かったな。
九谷……博士。
僕は、あんたと交渉したくて……
……今を生きてるんだ」
「……交渉?
もうすぐ完全にポンコツになるお前とか?」
何を莫迦な、と。
怪訝な顔の九谷に、僕は、なるべく不敵に見えるように、微笑んだ。