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到着したとたん。
まだ羽の回ってるヘリから、オイラは、トイレに駆け込んだ。
その後を、呆れ果てた顔の武蔵川が、追いかける。
絶~~対っ、武蔵川は、オイラが食あたりでも、起こしたと思うだろ~~な。
でも。
これは。
この感じは……!
「セブンティ!
いい加減にしろ!
どこの世界に、トイレに籠もって出て来ないアンドロイドが、いるんだ!!」
「るせぇ! ここに居るんだよ!
黙って待っとけ、武蔵川!」
トイレの、大の方で頑張る個室では無く。
シンクのある出入り口の手前で、カギを掛けたもんだから。
武蔵川は、トイレの中に一歩も入れず、扉をがんがん叩いてた。
それ、判ってたけど、完っ璧に無視して、そのまま。
十分ほどで手っ取り早く用を足し、トイレから出れば。
僕は、応援を呼びに行きかけたらしい武蔵川の背中にぶつかった。
そして。
武蔵川は振り返って、僕を見るなり、目を見開いた。
「セブンティ!
お前、髪が!
……黒い。
ピアスが!
……無い」
以前の姿に、あっさり戻った僕に。
武蔵川は、ポリシーは、どうしたんだ!?
やっぱり、食べ合わせが悪かったのか!?
と、武蔵川は素っ頓狂な質問をして来る。
そんな彼に、僕は、ひらひらと、手を振り、言った。
「服装規定があるって言ったのは、あんただろ?
それに……知り合いを見かけて、思いだしたんだ」
「……は?
また、一体今度は……何を言い出すんだ!?
お前がここに来たのは、初めてのはずだろう?
諜報部のヤツらが引き継ぎにでも、来ているのか?」
なんて、クビを傾げる、武蔵川の手を、僕は、引っ張った。
「早く行こう!
先方を待たせたら、マズいんだろ?
武蔵川さん!」
「武蔵川『さん』だと!?
セブンティ!
お前、一体、どんな風の吹き回しで……?
それとも、また、諜報部に復讐するために何か企んでいるんじゃ……?」