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「もちろん、研究よ?

 決まって居るじゃない」


 そう言い切ったオリヱに、久谷は、ひゅ、と眉を寄せた。


「へえ?

 この、卑猥な名前を持つロボット相手に。

 浮気、とか、不倫について、レポートでもまとめるつもりなのか?」


「何想像してるのよ!?

 これは、あたしの作った、69番目の有機アンドロイドなんだから仕方ないでしょう?

 それに、別に、あたしは浮気しているワケじゃないわ!」


「じゃあ、何だよ!

 お前が、研究しているのは、軍事用のアンドロイドだろ!?

 女用のダッチワイフを作っているワケじゃないのに!

 何でエッチの仕方なんて教えてんだよ!」


 これは、久谷の嫉妬、って言うヤツなのだろうか?

 科学者というカテゴリーの中に居るヤツにしては、大分カルく。

 いつも下らない冗談ばかり言っている久谷が、珍しく真剣な顔をして、怒っている。

 そんな久谷のココロを、知ってか、知らずか。

 オリヱは、ふっと、笑った。


「そうよ?

 あたしの作ったアンドロイド(こどもたち)は。

 ジャングルや、砂漠の真ん中で、ロボット同士潰し合うような。

 下品で汗臭い一兵卒なんかじゃないの!

 セレブの社交界パーティーに潜入したり。

 どんなに、固いセキュリティーの施設にも。

 影のようにこっそり入り込み。

 軍事情報を獲得したり、政府の要人を暗殺したりする。

 スパイみたいなお仕事をする子達なのよ?

 必要に応じて、女性の扱い方だって、教えなくちゃいけないの!」


「だからって!

 お前が自分でやることは無いだろ!」


 オリヱの説明にまだ不満らしい。

 久谷の抗議に、オリヱは、妖しく笑った。
 
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