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「やぁねぇ。

 男の嫉妬なんてみっともない。

 シックス・ナインを良く見て?

 あなたに、背格好も、顔も……声だってそっくりでしょう?

 あたしの好きなのは、あなただけ。

 あなた、自分のコピーに、ヤキモチ焼いてるのよ?」


「………」


 久谷は、オリヱに言われて、一瞬息を呑み……

 改めて、僕の顔をしげしげと眺めると。

 それから、長々とため息をついた。


「……判ったよ。仕方ねぇなぁ。

 オリヱちゃん、この研究所の主席研究員だし。

 ちゃんと、仕事だって割り切ってするなら、許してやるしかねぇか……」


「なぁに?

 真司ってば、偉っらそうに」


 どうやら、恋人が渋々でも、認めてくれたのが、嬉しいらしい。

 オリヱがにこっと笑った顔が、とても可愛いくて……愛しくて。

 僕のココロが、ずきん、と痛む。

 僕が、どんなに久谷に似ていようとも。

 オリヱは、こんな笑顔を僕に見せることは、無い。

 オリヱの笑顔には、久谷も弱いのか。

 彼は、ガシガシと頭を掻くと、自分の彼女の肩を抱いた。


「本っ当は、イヤなんだからな?

 それを曲げて許してやるんだから、今日は、これからオレに付き合え」

「え……?

 今から?

 でも、あたし、今日は、これからシックス・ナインのメンテナンスがあるのよ。

 今は、一時停止を押しただけだから、少し経つと、動き出しちゃ……」



 そんな、オリヱの言葉は。



 久谷の唇で塞がれた。



 

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