愛コトバ
気づけば、時計は10時を過ぎていた。
ケータイを開くと、そこにはお母さんからのメールが一通。
着信は二件。
心配かけちゃった。
あたしは自分の荷物をまとめる。
「今日はありがとっ…あたし、もう帰んなきゃ」
なんで普通に話せてんだろ。
あたしは、今どんな風なんだろう。
「送ってく…危ないしね」
美岬はケータイと財布を持ってそう言った。
いつもなら絶対に拒否するけど、美岬だからなのか、あたしはおとなしく頷いた。
なにも会話することなく沈黙が続く。
二人の足音と、車のエンジン音。
それ以外は全く音がない、静かな雰囲気。
だけど、それは決して重苦しくなく、どこか和めるような沈黙。
ねぇ、あたしさ。
美岬といると……安心する…。
男にこんな感情を持ったの、久しぶりだよ…。
でも、まだどこか怖いんだ。
新鮮な感情と同時に蘇り始めるのは………過去の恐怖。
美岬。
あなたはあたしの過去まで、この恐怖まで取り除いてくれますか?