愛コトバ
美岬の家からあたしの家までは少し遠かった。
「美岬、ここでいいよ」
あたしは家の近くの公園で足を止めた。
それにつられて美岬も足を止める。
「…そう」
あたしの頭を優しく撫でてそう呟いた美岬。
なぜか顔が熱くなる。
「遠いのにごめん……ありがと…」
「どういたしまして」
あたしの言ったお礼に、ふっと小さな笑みを浮かべる。
「ねぇ…」
「…なに?…美岬?」
立ち去ろうとしたあたしに美岬が声をかける。
「メアド教えて」
その言葉にあたしはびっくりして美岬の言ったことを疑う。
女よけまでしてる美岬が、あたしなんかと?
「星、見に行くんでしょ?」
意地悪っぽく微笑みを見せる美岬にあたしはケータイを取り出した。
普段ならなんとしてでもしない行為。
なのに、嫌じゃなかった。
久しぶりにお父さんと弟以外の男の名前が、あたしの電話帳に写し出されていた。
それを見て、不思議と自然でいられた。
どうしちゃったの、あたし。
ベッドの上やお風呂の中で、あたしは自分でも信じられない今日の行動や感情を思い返してた……。