愛コトバ
「じゃあ尚更やめてほしいんだけど?」
言いながらぐいっと自分の手を引っ込めようとする。
だけどそんな抵抗も虚しく、手は微かに動いただけで意味はなかった。
「ごめんね、無理かな」
ニッと笑う桐谷純。
あー…この笑顔を消し去ってやりたい。
「俺、ミヤビちゃんのこと気になるんだよねぇー♪だから、俺ねミヤビちゃんのこと頑張って堕としたいんだっ」
は?
気になる?
こいつに言われても迷惑なだけなんだけど。
「合コンでは近づけなかったけど、俺頑張るから!」
そう言って笑顔で言われた。
こいつ、笑顔だけは可愛いんだ。
憎たらしいやつ。
「頑張るって迷惑なんだけど…」
もう疲れた。
なに言っても無駄な気がしてきた。
バカみたいに真っ直ぐで、どれだけ突き放しても、意味はなく、また追いかけてくるんだ。
「迷惑にならないようになるって!あと俺、ミヤビちゃんのケー番とメアド…ゲットしたからよろしく!」
「はっ?」
なにそれ!
ケー番とメアドを…?
どうやって。
本当にストーカーで訴えてやろうか。
「詩織に教えてもらったから…!」
そう言って桐谷純は手を離した。
「じゃあね」って言って立ち去っていった。