愛コトバ

「じゃあ尚更やめてほしいんだけど?」



言いながらぐいっと自分の手を引っ込めようとする。



だけどそんな抵抗も虚しく、手は微かに動いただけで意味はなかった。



「ごめんね、無理かな」



ニッと笑う桐谷純。



あー…この笑顔を消し去ってやりたい。



「俺、ミヤビちゃんのこと気になるんだよねぇー♪だから、俺ねミヤビちゃんのこと頑張って堕としたいんだっ」



は?



気になる?



こいつに言われても迷惑なだけなんだけど。



「合コンでは近づけなかったけど、俺頑張るから!」



そう言って笑顔で言われた。



こいつ、笑顔だけは可愛いんだ。



憎たらしいやつ。



「頑張るって迷惑なんだけど…」



もう疲れた。



なに言っても無駄な気がしてきた。



バカみたいに真っ直ぐで、どれだけ突き放しても、意味はなく、また追いかけてくるんだ。



「迷惑にならないようになるって!あと俺、ミヤビちゃんのケー番とメアド…ゲットしたからよろしく!」

「はっ?」



なにそれ!



ケー番とメアドを…?



どうやって。



本当にストーカーで訴えてやろうか。



「詩織に教えてもらったから…!」



そう言って桐谷純は手を離した。



「じゃあね」って言って立ち去っていった。



< 15 / 29 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop