愛コトバ
美岬のあの寂しそうな目が、あたしの母性本能をくすぐったんだ。
じゃなきゃ、男が無理なあたしが、あそこまでできるはずないもん。
そうだよ………。
そう思いこむことで、自分を失わないようにすることしかできない。
なんとなくわかってる。
美岬への感情と、桐谷純への感情が違うことに。
あたしだって恋をしたことがないわけじゃない。
元々男が嫌いだったわけじゃない。
だけど、美岬への感情を認めてしまえば……。
今のあたしは壊れる気がして…。
素直になれない。
今でも少しずつ壊れていっている今のあたし。
自分を取り戻さなきゃ…。
今からでも遅くない。
壊れたところも、なおしていける。
だけど……もう少し…。
桐谷純とのデートが終わるまで……。
自分を失わない程度に楽しみたい。
……………なんて。
あたしらしくない。
一瞬脳裏に浮かんだ考えが、怖い。
あたし……なに考えて…。