愛コトバ
「ミヤビちゃん?」
名前を呼ばれ、声の主を見る。
「次だよ?考えこんでどーしたの?」
観覧車の順番。
どうやらあたしはしばらくの間考え込んでたらしい。
もうこいつとは……、付き合わない。
「あたし乗りませんから。乗りたいなら一人で乗ったら?」
そう桐谷純に言って、繋がれた手を振り払う。
そんなあたしを驚いた表情を浮かべて見る近くの客、係員、桐谷純。
それを無視してスタスタと出口へと早歩きで向かう。
例え注目を浴びようが、嫌なものは嫌なの。
「……ミヤビちゃん!」
後ろから名前を呼ばれる。
振り返らなくてもわかる。
今まで一緒にいたんだし、声だけでもわかる。
だけど、振り向いたりなんてしない。
あんな男に少しでも心を開こうとしてしまったあたしって…。
情けない。
チャラチャラしたやつなんて、女をもてあそんで捨てるんでしょ。
だから嫌いなんだよ。
あたしはそんな甘くない。
落ちない。