愛コトバ
「ちょっと!」
そのかけ声と一緒に肩に違和感。
肩をつかまれてるせいで前に動けない。
むしろ強制的にこいつの方に振り向くことになる。
そんな桐谷純をキッと睨みつける。
「あたしに触らないで?もうおしまい」
わけが分からないと言う表情を浮かべるこいつ。
あたしらしさを少しずつ取り戻そう。
「離して」
冷たく言い放つあたしに、桐谷純の瞳は揺れたと思うと、瞬時に強さを増す。
そして、あたしの体は引き寄せられた。
「んっ……」
唇の温もりが、全身に伝わるように…。
あたしの体を動けなくする。
いきなりのことについていけていない思考は、ようやく追いついてきた。
キスされてるんだと。
これ以上されるがままにされるか……!
自分の意志を崩さぬように言い聞かせて必死に抵抗する。
いくら胸を叩いても肩を押しても意味がない。
頭は押さえられて動かせない。
なんで………?
唇が離れたと思うと痛々しい音が響いた。
呆然とする目の前の男をまた睨みつけて、あたしは走って逃げた。
“最低”と言葉を残して………。