愛コトバ



2人のデュエットが始まってしばらくたつ。



サビに入ったところで、あたしは近くにいた千夏に、「具合悪いから帰るね」と言って部屋を出た。



実際、具合が悪いなんていうのはうそで、抜けるための当てつけな理由。



もう、あの場にいることがたえれなかった。



あの男、桐谷純(キリヤジュン)がいるから。



「ありがとうございましたー。」



店員達の業務的な台詞があたしが出ていく少し前に響いた。



外は暗くて、夜空には星なんて見えない。



この辺は、空気が汚いから…。



おばあちゃんの家に行ったとき見た、綺麗な星空をもう一度見たいと、夜空を見る度に思う。



「ねぇ、ちょっと待ちなよ…」



低めの透き通るような声が誰かを呼び止める。



「ちょっと…」



手に温もりを感じてびくっとして振り向く。



そこには漆黒の髪になにもかもを見通すかのような鋭い瞳を持った整った顔の男の子が、電灯の光に照らされてた。



「帰るの…?」



孤独というかなんというか、独特の雰囲気を持っている。




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