誰よりも、君がすき。
好きってキモチ。
「間もなく電車が発進します。
黄色い線の内側までお下がり下さい」
聞きなれたアナウンスに私は
赤いシートに腰を下ろした。
芹沢は隣の車両に乗っている
みたいだ。
思えば初めから私は芹沢に
他の男子とは違う
特別な何かを感じていた。
だから、自分で心の中に
境界線をつくってたんだ。
境界線のこちら側に、決して
芹沢が足を踏み入れることなんて
ないように、細心の注意をはらって
気持ちに気付いてしまわぬように。
「...はぁ」
だけど私の初恋は実る事なんて
ありえない。
芹沢には智子という私なんかより
ずっとずっと可愛くて
完璧な彼女が居て。
私にもずっと私を一途に思ってきて
くれた結城という彼氏が居て。
この気持ちを伝えたところで
二人の人を傷つけて
一人の人を困らせてしまう。
そんなこと私には到底できなかった