誰よりも、君がすき。
誰に見られても可笑しくない
学校の正門で。


今から始まろうとする
行為を私は受け入れようとしていた。



芹沢は私の制服のボタンに
指をかけ、
丁寧に一つ一つ外していく。


芹沢の指が私の身体を
なぞる度にくすぐったいけど
凄く気持ちがよくて。



「...浅野?」

不意に芹沢の手が止まり、
不思議そうに私の顔を覗き込んだ。


「ごめん。俺、そんなつもりじゃ」


申し訳なさそうに謝る
芹沢をみて、自分が泣いていることに
初めて気付いた。


心の中で

あの日の新川さんと自分を
重ねていた。

あの日私は新川さんのことを
すごく惨めに思った。


だけど一番惨めなのは。


全てボタンの外された
ブラウスに視線を落とす。


一番惨めなのは

…この私だった。

< 79 / 119 >

この作品をシェア

pagetop