《完》螺旋 ―*RASEN*― 〜禁断の迷路〜
珪より年上に見える、線の
細い利発そうな青年が
そこに立っていた。


手には書店のものらしい
袋をさげている。




「あ―――…」




彼が紗耶の兄だろうと、
すぐに察した。




けれどこんな遭遇は
想定してなかったので、
とっさにすぐ言葉が出ない。




「……紗耶さんに、会いに
来たんですけど……。

あ、オレ、クラスメートで――」




短い沈黙の後、珪は何とか
取り繕ってそう答えた。




自分の本当の立場を説明
するのもどうかと思い、
そこは偽ることにする。



_
< 228 / 448 >

この作品をシェア

pagetop