《完》螺旋 ―*RASEN*― 〜禁断の迷路〜
背中を走る寒さを懸命に
押し殺して、あたしは
精一杯普通の声で珪に告げる。




珪はまだ納得のできない顔で、




「ホントかよ?

ったく……こんなんじゃ
オレ、安心して帰れねーじゃん」




そのセリフにあたしは
ピクッと肩を震わせた。




「――帰る……。

そっか――そうだよね……」





どうしてあたしはいつも
そうなんだろう。




珪がこうして目の前に
いると、つい、彼が本当は
遠い所の人なんだって
ことを忘れてしまう。



_
< 264 / 448 >

この作品をシェア

pagetop