《完》螺旋 ―*RASEN*― 〜禁断の迷路〜
『幸せだよ』と笑う紗耶を
見たかった。




自分の前でくったくなく
笑っていた姿が、かりそめ
なんかではなく本当の姿
なんだと信じたかった。




もしそれが叶えば、自分も
楽しかった想い出を胸に、
安心して帰ろうと思って
いたのに……。





――珪の言葉を奪って、
全てを封印しようとする
かのように重ねられた唇。




だけどあんなことで、珪の
思いにまで蓋はできない。




(あんなことで――…)




心の中で呟きながら、珪は
そっと指で自分の唇に触れる。



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