《完》螺旋 ―*RASEN*― 〜禁断の迷路〜
消えそうなほど弱々しく、
マスクをつけてるせいで
くぐもってたけど。




だけどそれは紛れもなく、
お兄ちゃんの声だった。




「紗耶……こっちに」




お兄ちゃんに目線で
うながされて、ベッドの
すぐそばのイスに座る。




お兄ちゃんは目を細めて
あたしを見上げ、今まで
聞いたことがないくらい
優しい声でこう言った。




「泣いてないか、紗耶……?」




「何……言ってんの。

泣いてるよ。

泣かないでいられるわけ、
ないじゃん……」



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