レモン白書~チャラ男との命がけの恋~

 「あいつは病気なんだ。移植しないと本当に死んでしまう。」


 「また……嘘なんでしょう? ひどいよ!!」


 「嘘なんかじゃない!! 」


 「そんな……。」


血の気が引いていく。
嘘だって言ってほしい。


嘘でも……。



 「それでも、それでも幾のところに行くのか? 幾がいいのか?」

田代君がわたしの肩を両手で揺さぶる。


 「ごめんなさい。」


突然、その手はわたしを強く抱きしめた。


 「明日居なくなるかもしれないんだよ。 そんな幾に仙崎さんを幸せに何か出来ない!!」


 「幸せにしてもらいたいなんて考えてないよ。ふたりで幸せになりたい!!わたしが早瀬君を支えたい……」



きつく抱きしめられていた腕が緩む。


 「なんでなんだ…… なんで、いつも幾なんだ…… あいつは俺の大切なものばかり奪っていく。」


  「田代君……」


 「だってそうだろう。 生まれつき心臓が悪かった幾に両親の愛情は全部注がれた。俺は生まれると同時に捨てられたんだ……」


 「そんな言い方……」


 「仙崎さんに何がわかるんだ!! 行けばいいさ!!行って後悔したらいいんだ!! 」


 「…… 」


 「幾は病院にいるよ…… 幾バカだから後の事なんて何も考えずに俺と言い合いしたからな…… あの夜に発作を起こしてしまってそのまま病院送りだよ。」


 「あの靴箱でもめた日だよね。」


 「あぁ。」


 「そんな、何で教えてくれなかったの!! わたしひとりだけ田代君に守られてそんなの酷いよ!! 」


 「酷いか…… 俺もしんどかったよ。 ライバルが幾なんて…… この世では幾にはかなわないそういう運命みたいだから……」


彼が空を見上げている……


田代君の頬を伝う涙に気付いていたけど、何も言わない方がいいって思った。











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